告白

 お休みを利用して福岡へ。
 職場の仲間と楽しく飲み、そのまま朝までコース。
 腹を割って色んな話が出来て、今までたまってたストレスとかもすっきり吐き出せた夜だった。
 で、そのまま三人でまんが喫茶で始発を待っていると、事件が起こった。
 三人のうちの一人がまんがを取りにブース(三人用の座敷を借りていた)を出たところ、もう一人の同僚がすっかり眠りこけていた私にいきなり抱きついてきた。
 びっくりしたし、寝ぼけていたしで訳分かんなくてぽかーんとしているとそのままキスされてしまった。
 頭真っ白、パニック状態。
 状況が理解できずにいるとまじめな顔して彼が私を見つめ、
「好き…」
 って、こらー!
 お前結婚してるだろー!子どももいるだろー!
 と、冷静な今なら言えるけれど、あの時はびっくりしたのと恐怖とで一言も声が出せず、抵抗もできなかった。
 ようやく同僚が戻ってきて、お互い眠ってたフリ。
 緊張の一夜が明け、まんが喫茶を出て、三人で仲良く朝マック
 で、昨日告白してきた同僚がトイレに行ったので、昨日の事、もう一人の同僚に相談しようかどうしようか悩んでいると彼からメール。
「二人っきりになりたいな。ダメかな?」
 って……。
 こりゃちゃんと話し合わなきゃダメだな、と思い覚悟を決める。
 彼と私は高速バスで帰宅するので、もう一人の同僚とバスセンター入口で別れ、エスカレーターで見つめ合う。
「キスすると思ってなかった?」
 と言われ、頷く。
「冗談かと思ってた」
 彼も困ったように笑う。
 高速バスに乗るのをやめ、二人で町を歩き、公園のベンチに座ってしばらく話す事に。
「結婚しててもね、好きなものは好きなんだ」
 そう言われて、何も言えずに黙り込んでしまった…。
「今、どうやって逃げようかなーって、悩んでる?困ってる?」
 そう言いながら顔を覗きこまれて、にっこり笑いながら頷いた。
 彼の事を兄のように慕っているから、どうやって気持ちをわかってもらえばいいのか、言葉に悩んでしまった。
「もう大好きって言ってくれなくなるの?」
 と言われて、
「うん、大ッ嫌い」
 と、笑顔で言ってしまった。
「キスしたい。大好きなんだ。どうしたらこの気持ちを信じてもらえる?」
 真剣な目で言われても、私はその気持ちに答える事は出来ない。
「それ以上言ったら、もう二度と、相談も話もしない。本当に大ッ嫌いになっちゃう。だからやめて」
「それは困るな…。仕事にも支障が出る…」
 彼も困ったように笑っていた。

 帰宅して、頭の中はぐちゃぐちゃ…。
 困った。
 心を落ち着けるための頼みの綱…。
 一緒に飲んでいたもう一人の同僚に電話する。
「あのさー、相談なんだけど…」
 その一言に、同僚が黙り込む。
「それは、深刻な相談ですか?」
「そうです。いいですか?」
「はい、いいですよ」
「君、気付いた?私も寝ぼけてびっくりして何にも言えなかったんだけど、君が本を取りに行ってる時、彼がキスしてきたんだ」
「まじっすか?腕枕してるのは気付いたけど、それは気付かなかった!なんで言ってくれなかったんですかー!殴ってやったのに」
「気付いてたのに無視してたのかと思ってた…」
「いや、すいません、マジ気付かなかったです…」
 彼のまじめさと優しさにちょっとほっとする。
「あの人、なんかたまってるんですかねー?最低っすね。絶対近づかせないようにするんで、安心してください!いつでも僕に言ってくださいね!なんなら今からガツンと言ってやりましょうか?」
「いや、いいよ。油断した私も悪かった。でも次はないから。絶対二人っきりにならない。もし次やられたら君に一番に相談するから」
「まかせてください」
 彼の力強い言葉にほっとして、ようやく安心して眠る事が出来た。
 なんだか、好きな人にはなかなか好かれないのに、好きになって欲しくない人には好かれてばっかりだなー。
 ジレンマです。